【これまでのあらすじ】
悪の総帥モリアーティ教授を降霊術で
呼び出そうとしたホームズたちだが、
ボヘミアに行くことにする。
稀代のハガキ職人アイリーン・アドラー嬢の
ボヘミア亡命を阻止するためだ。
パスポートも無事取得してボヘミアの王都
プラハにやってきたのだが、
聖ヴィート教会の地下迷宮でホプキンス警部が
謎の怪人物に誘拐される。
何とかホプキンス警部を助け出したホームズたち
だったが…。

 
  

ネイヤッ!
ネイヤネイヤネイヤッ!

…何のつもりだい?

 
 
決まってるじゃないかっ!
僕の、あの、ホプキンス君を
さらっていこうとした、あの男!
憎むべき変態野郎!
変態はおたがいさまだろう。  
   

幸いにもホプキンス君には
ケガ一つなかったが、とにかく許せん!
あの男にもう一度であったら、
たたきのめしてやるのだよっ!
ネイヤッ! ネイヤッ! ネイヤッ!

そのネイヤというかけ声がよく
わからんのだけど。

 
   

はっはっは。
君もとことん無知で蒙昧だな。
これこそ東洋の格闘技、
ネブガギアスの掛け声だよ。
ネイヤッ!ネイヤッ!

なんだか気合が抜けるなあ。

 
   

それにしても
ホプキンス君とレストレードの芋野郎は
遅いな。どこに行ったんだ!

ホテルの向かいの洋品店に
服を買いにいったんだよ。
ボヘミアの宮廷に潜入するんだろう?

 
   

なんだってっ!
もしあの変態野郎に
出会ったらどうするんだっ!

ほとんど離れてないよ。
それにレストレード警部も一緒だし。

 
   
あんな長ナス野郎があてになるかっ!
なぜホプキンス君を出したんだっ!
えっ!言ってみろっ!このポロネギ野郎!
ぐぐぐぐぐぐっ
し、仕方ないだろうっ!
ホプキンス君は我々一行の主人役なんだから、
サイズの合わない服なんか着てたら
怪しまれるじゃないか!
貴族の令嬢らしい格好をしないとっ!
 
   

ということは、ホプキンス君のしなやかな
肢体にメジャーをあてがう洋品屋がいるの
かっ!
い、いますぐっこの手でっ深い海に沈めて
やるっ!

ホプキンス警部のためを思ったら
まださらわれているほうがいいのかも
しれないなあ。
 
 

ぐううううっ!こうしてはいられないっ!
ネイヤッ!ネイヤッ!ネイヤッ!

落ち着いて待てよ。

 
 

ネイヤッ!ネイヤッ!
ネリョアッ!ネリョアッ!

  
コン、コン
ホームズさん、 ホプキンスです。
ただいまもどりました。
 
 

おおおおっ!
待っていたよマイスイートゴールデン
ハーベストハニー!

おそくなりましてすみません。
私のサイズに会うドレスがなかなかなくて、
こんな時間になってしまいまして。
 

・………。

あ、やっぱり変ですか?
男の私がこんな格好したらやっぱり変なところも
出てきますよね。
これから潜入する時におかしな点があったら
敵に気づかれてしまいますね、
遠慮なく言ってください。
 
 
と、とんでもないっ!
何の問題も無いっ!
素敵だ!とびっきり素敵だ!
問題だらけだっ!
なんだそのベタベタなやりとりっ!
 
 

ああ…僕は神を恨む…
こんな絶大に可憐で至高の美を持つ
ホプキンス君を生み出しておきながら、
僕に彼を抱きしめる、ほんのわずかな
勇気をくれないなんて…

…まあ、それはともかく、
ずいぶんと板についた女装だね。
それにそんな高そうなドレスに宝石も
よく借りれたねえ。
 
 

いえ、買ったんです。

ええっ!?
そ、そんなお金どこから…。
 
 
心配いりませんよ、ワトスンさん。
スコットランドヤードの警官には
毎月毎月女装手当てが支給されてるん
ですから!
血税を何だと思ってるんだあっ!  
 

ああ…ずっとこうしてホプキンス君を
眺めていたい…けれども…
僕たちには仕事があるんだ…

そうだよ、ホームズ。
ハノーファーの貴族、マッケンゼン男爵の
令嬢の一行としてもぐりこむんだったな。
ホプキンス警部が令嬢役で、
 
 

僕がその婚約者。

だからそれは無理がありすぎだろう。  
 

マッケンゼン男爵の娘は10歳なんだ!
もう婚約者の一人や二人いてもいい年じゃ
ないか!

いいわけあるか!

 
 

やむをえないなあ。
じゃあ僕はホプキンス君の家庭教師。
ワトスン君は執事。
レストレード君は…まあ
マッケンゼン家に代々祟る霊とでも
しておこうか。

もう、怒ったほうがいいぞ
レストレード警部。

 
 

しかしこの一行、
ちょっと不自然だな。

そりゃ霊連れの一行なんて無いだろう。  
 

令嬢の一行だというのに
お世話役の女性が一人もいないと
言うのは不自然極まりないからな。

そっちかよ。
まあたしかにな。
 
 
しかし誰を女装させるか。
君のようなヒゲ面を女装させても
まったく不自然だろうしな。
悪かったな。
じゃあ君が女装しろよ。
 
 
いや、ホプキンス君が女装している以上、
僕は男装じゃないと釣り合いが取れない。

何の釣り合いだよ。
じゃあレストレード君…は
ちょっと身長がありすぎるな。
女装には不向きだ。

 
やむをえんな。
大英帝国人の旅行客を雇おう。
一人旅の口の堅い女性を乳母役に
雇うんだ。

しかしこんなところで一人旅なんてしてる
大英帝国国民の女性がいるかね。

 
 

いや、きっといる。

えらく自信たっぷりだな。
 
 

昔から恋に破れた女は
ボヘミア一人旅をするものだと、
大英帝国演歌の歌詞にもあるだろう?

そんなジャンルの存在すら知らないよ。  
 
この求人広告をドアの外に貼ってと。
あとは待つだけだ。

せめてもっと人が見そうなところに
貼れよ。

 
 

恋に破れた女は
意味もなくホテル内の扉を見て回るものだと
大英帝国演歌の歌詞にもあるじゃないか!

 
だから知らんといってるだろうがっ!  
 

がたがた言わずに聞け!

コンコン。
あのう、表の張り紙を見たんですけど、
ぜひお話を利かせていただきたいんですが。

 
 

あ、来ましたよ来ましたよ。

いくらなんでも早すぎるだろうっ!

 
 

はっはっは、まったく持って君は
いかれポンチ野郎だな。
現にこうしてきてくれてるじゃないか。
はいはい、今開けるのでちょっとまってて
くれたまえ。
がちゃ。



 
 
!!
ア、アイリーン・アドラー嬢!
 
  

はあ〜〜
いきなり現れてこりゃまたびっくり〜
(ヨイヨイ)
大英帝国演歌はいいっ!  

 

突然ホームズたちの前に現れた
アイリーン・アドラー嬢!
果たして彼女の狙いは!?
亡命計画の実態とは!?
つづく!

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