「地上デジタル化にともないまして、来月からチャンネルの表記が二進数になります！」
「0と１だけになるリモコンのことも考えてください。」
「はい。」
「有力候補の一人、ロワイヤル元環境相の弟が爆破犯であったという噂が新聞報道されているそうです。」
「事件は20年前に起こった、グリーンピース船『虹の戦士号』爆破事件です。これは当時、フランスの核実験に抗議していたグリーンピースの船が、ニュージーランド寄港中にフランスの諜報機関DGSEの工作員により爆破されたとされる事件です。当時は大きな問題となり、ニュージーランドとフランスの外交問題に発展したといいます。」
「はあ。」
「で、ロワイヤル元環境相の弟のジェラール氏が爆弾を船に置いたと言っていたと、もう一人の弟のアントワンヌ氏が新聞記者に語ったそうです。
」
「事件の真相はともかく、これは世界の大きな流れを物語っているかもしれません。」
「それは先年のイラク戦争時にさかのぼります。」
「フランスのエネルギー政策は原子力に強く依存しており、高速増殖実証炉スーパーフェニックスなどが有名ですが、原子力には反対する声などもあり、石油などのエネルギーも無視できません。イラク戦争開戦に反対した理由のひとつに、石油開発プロジェクトなどでイラクと密接な関係にあったからではなどといわれています。」
「はあ。」
「そしてロシアですが、このところ国内の油田が好調で、世界第二位の産油量です。折からの石油価格の高騰で、莫大な利益を上げています。2003年段階では、ロシア産原油の主な輸出先のひとつがフランスです。この関係を強化し、アメリカ一国支配に対抗しようとする動きが出てもおかしくはないでしょう。」
「はあそれで。」
「イラク戦争にともにこの二国が反対したというのは、こうした二国が接近しつつあるという見方も一部には見られます。なにしろかつては露仏同盟などで両国は密接な関係にありました。そういった歴史的な観点から両国が接近していると見てもおかしくはないのではないでしょうか。」
「そこでロワイヤル元環境相の弟が、元諜報員であったという話です。」
「知ってのとおり、ロシアのプーチン大統領は元KGBというバリバリの元情報局員です。」
「まあそこまで誰でも知ってる常識扱いするのはどうかと思いますが。」
「首脳外交というのはお互いに共通する趣味があるとより密接になるものです。小泉元首相がエルビス・プレスリー邸で踊ったといって馬鹿にされたりしましたが、こうした趣味の共有が首脳同士の連帯感を深め、関係を強化するものなのです。」
「ですからロワイヤルさんが大統領になって、プーチン大統領と会談すれば、共通の話題である情報活動トークで大盛り上がり、露仏関係がおおいに強化されるというわけです。」
「あんまりそういうことで盛り上がるのもどうか。」
「『私だったら爆弾で爆破します。』『いえいえ、それはスマートではないですね。私だったら、傘に仕込んだ金属弾発射装置で、リシンの入った弾を撃ち込みます。』『まあお上手。おほほほほ。』『ははははは。』」
「何がお上手か。」
「条約文をついうっかり水にとけるメモに書いてしまって互いに笑いあう露仏両大統領の姿が眼に浮かぶようです。」
「求めんなよ。」
「高圧ガス工業が塗るだけで防音効果がある制振塗料を開発したそうです。」
「塗るだけですか。」
「これを工場に塗ると静かな工場になりますね。」
「まあそうですね。」
「幼稚園に塗ると静かな幼稚園になりますね。」
「なんだか不安ですが。」
「魚の生きも悪そうですが。」
10月6日、ぬりぬり。
