ふたご1

「空前の冬彦さんブームですがいかがお過ごしでしょうか。」

ふたご2

「あれが絶後じゃなかったんですか。」

ふたご1 「食材宅配メーカーらでぃっしゅぼーやが、食器のリサイクル事業を始めたそうです。」

ふたご2

「食器のリサイクルですか。」

ふたご1

「会員の家で割れたり、不要になった陶磁器を回収して、粉砕の後にふたたび陶土とまぜて食器を作って販売するのだそうです。」

ふたご2 「それはよいことですね。」

ふたご1

「うちの近所の陶芸家の方も早速会員になろうと申し込まれていました。『これで失敗作も無駄にならない』」

ふたご2

「そんなにむやみやたらと回収させられても困ると思いますが。」

ふたご1

「回収する量が多くなれば、再生する陶器も大きくなるじゃないですか。そうすればみんなも喜ぶでしょう。」

ふたご2 「みんながみんな高知名産さわち料理みたいな食卓を囲んでるわけじゃないんですから。」

ふたご1 「小さな小皿に取り分けて食べる、一見それは個人の尊重に見える。しかし、そこにはある種の”隔絶”があるのではないか。皿と皿との間、それは人と人との”隔絶”に通じるのではないか。21世紀の現在、地球の国同士の移動時間はたしかに小さくなった。だが、人間同士の心の”隔絶”は大きくなってはいないのだろうか。」

ふたご2 「何を言い出しているのですか。」

ふたご1 「人間同士の心の”隔絶”を埋めるのは、皿と皿の”隔絶”から取り去る必要があるのではないか。そのために、現在人類が必要としているのが―――無闇と大きい皿である。」

ふたご2 「””がうっとうしいですよ。」
ふたご1 「一つの皿に、多くの人々が寄り集まり、手を伸ばす。そこには、人種や、国籍や、料理の壁は無い。カレーや、マツタケごはんや、酢豚や、ポークビーンズや、クスクスや、ジャンバラヤや、サムゲタンや、シュールストレミングが混ざり合い、溶け合う時―――。人々の心も溶け合い、わかり合えるのである。」

ふたご2 「そんな気色の悪いわかりあい方はとても嫌です。」

ふたご1

「もしくは食器をたくさんつくりましょう。」

ふたご2

「180度方向転換ですねえ。」

ふたご1

「今まで陶器で食器につかうのは、皿や茶碗やコップ、それにレンゲや箸置きなどがせいぜいでした。しかし、陶芸家の協力のもと、材料が有り余っている今、新しい陶器製の食器を作るチャンスがやってきたのです。」

ふたご2 「でもそれ以外に食器ってありましたか。」

ふたご1

「なけりゃ作ればいいでしょう。」

ふたご2

「作れますかねえ。」

ふたご1 「たとえばかに用フォークというものがあります。これはかにの身を掘り出して食べるのに最適です。このように、食器にはまだまだ隠れたニーズというものがあるはずです。それを掘り出していこうということです。」

ふたご2

「ほりだせますか。」

ふたご1 「たとえばフォアグラです。」

ふたご2 「ナイフとフォークで十分すぎると思いますが。」

ふたご1

「そうはいきません。最近はお値段も安くなってきたと言われたり言われなかったりもしますが、まだまだお高い。なかなか一般的な庶民には手が届きません。そんなフォアグラを食べる機会がたまさか、僥倖にして、盲亀の浮木、優曇華の花、万一訪れた時に、ナイフとフォークだけではたいへん心もとない。いったいどうすれば、この、フォアグラ様に立ち向かえるのだ、不安だ、不安だと思っているうちにプレッシャーに押しつぶされる人が耐えないといいます。」

ふたご2

「そこまでびびらなくても言いと思いますが。」

ふたご1 「そこで陶器で作った新しい食器の出番です。」

ふたご2 「そうなんですか。」

ふたご1

「この陶器製つけひげをつければ、なんだか偉くなったような気がしてフォアグラごときに負ける気がしなくなるのです!名づけて『フォアグラヒゲー』!」

ふたご2

「いろいろ言いたいことはありますが、陶器で作る必要性はいったいどこにあるんですか。」

ふたご1

「それを考えるのが今後の課題です。」

ふたご2

「そんな課題は最初にやれ。」

ふたご1

「ローマ法王選挙のコンクラーベの結果は煙突から出る煙の色で発表されましたが。」

ふたご2 「鐘もつきましたが。」

ふたご1 「イギリスの大衆紙サンが、総選挙で労働党を支持することをあらわすために、本社の煙突から赤い煙を出したそうです。」

ふたご2 「バチカンのまねですか。」

ふたご1

「そうなのです。労働党なら赤、保守党なら青、自由民主党なら黄色の煙を出すときめていたそうです。」

ふたご2

「なるほど。」

ふたご1

「サンが応援することを決めた政党は勝つと言うジンクスがあるので、注目を集めていたそうです。」

ふたご2

「ジンクスなのか。」

ふたご1 「というわけで、サンに別のことで、どちらを支持するかを問うてきました。支持するほうの煙を上げてもらえば、長年の日本の懸案も解決するというものです。」

ふたご2 「いくらなんでも日本のことがわかるんですかねえ。」

ふたご1

「明日は茶色の煙と、こげ茶の煙のどちらが上がるか。」

ふたご2

「またよく似た色の煙を。」

ふたご1 「目玉焼きにかけるのは、ソースか、醤油か。その結果が明日、下されようとしているのです。」
ふたご2

「英国までわざわざ恥をさらしに行かないで欲しいものです。」

4月22日、サンとCNNは同一資本なんだよ。

 

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