いやあすっかり春だなワトスン君。
若いホームズ
ワトスン博士

そうだな、陰鬱なロンドンの気候ではとても得難い春だ。

 
 
ロンドンの人々は公園や海などレジャーにうかれさわいでいる。
若いホームズ
ワトスン博士

この陽気だからな。

 
   

なのにだ。

若いホームズ
ワトスン博士
なんだよ。  
   

どうして僕はこの薄暗い部屋の中に籠もりっきりになっていなきゃいけないんだ。

若いホームズ
ワトスン博士 
そんなこと言ってもなあ。  
   

僕だって犬とともに公園を走ったり、フリスビーを投げたりして戯れたいんだ!

ホームズ
ワトスン博士
びっくりするほど似合わない行動だなあ。  
   

なのに僕はこうして部屋の隅でフリスビーをかじることしかできない…。

ホームズ
ワトスン博士

そっちのほうが似合っているがやめろ。

 
   

いったいどうしてこんなことになってしまったのか。

ホームズ
ワトスン博士
そりゃホームズが悪いんだよ。  
   

僕が?なぜ?

ホームズ
ワトスン博士
なぜってよく思い出してみろよ。  
 
……たしかに人間は生まれながらにして『罪』を背負っている…それがいわゆる『原罪』と呼ばれるキリスト教の『概念』…!!
ホームズ
ワトスン博士

いや、そんなたいそうなものじゃなくて。

 
 

そう、人間はその『原罪』にとらわれて生きる、『神の囚人』なのかも知れない。だが、だが、それでも人はその「神の作った壁」の中で、どう生きるか、それが、人間の、とりうる、生き方、では、ないだ、ろうか、、、、、、

ホームズ
ワトスン博士 

、、が多い。

 
 
で、なんだっけ。
ホームズ
ワトスン博士

なんだっけじゃないよ。まったく、それだからこんなことになってしまうんだよ。

 

どんなこと?

ホームズ
ワトスン博士
まったく、それじゃなんのために部屋に籠もっているのかわからないだろ。  
 
たしかにわからないな。
ホームズ
ワトスン博士

あのな、昨日依頼人から手紙が着いたろう。

 
 

そうだったかな?

ホームズ
ワトスン博士
手紙を送ってきたのは首相とヨーロッパ担当相だぞ?  
 

首相?首相というとこの時代の大英帝国では第一大蔵卿と訳すのが正しい、内閣の首班じゃないか!

ホームズ
ワトスン博士
そんなことはどうでもいいんだよ。  
 

どうでもいいとはなんだ!イギリスの内閣制度は他国の内閣制度のさきがけでありながら、他国とは違った特徴を持つんだ!首相が正式に設置されたのは1937年になってからなんだぞ!

ホームズ
ワトスン博士
で、その首相の手紙の内容だが、覚えてるかい?  
 

うーん…。たしか何か人形のような暗号が躍っていたような…。

ホームズ
ワトスン博士
全然違う。  
 

なんだ君は!僕のいうことをすぐに否定して!否定からは何も生まれないぞ!生まれるのはヒテイザウルスだけだ!鳥盤目装盾亜科剣竜下目の!

ホームズ
ワトスン博士

ある外交機密に関する重要な文書が無くなったので、それを探して欲しいということで。

 
 
その機密とはある海軍に関する秘密協定…そうだったな。
ホームズ
ワトスン博士
いや、全然違う。とある王族の結婚問題。

 
 

なんだと!僕の記憶が間違っているというのか!

ホームズ
ワトスン博士

うん。

 
 

いい加減なことばかり言いやがって!よしわかった!君と僕の記憶のどちらが正しいか、賭けてみるか!

ホームズ
ワトスン博士
いいよ。  
 
ふっ、首相からの手紙を見てほえ面かくなよ。えーと、手紙手紙手紙…
ホームズ
ワトスン博士

無いよ。

 
 

無い!?無いってどういうことだ!?


ホームズ

ワトスン博士
今朝お茶を飲もうとしてただろう。  
 

うむ、いいスコーンが手に入ったのでな。やはりイギリス人の朝は紅茶とスコーンだよ。

ホームズ
ワトスン博士
で、君が二個目のマフィンに手を伸ばそうとした時だ…

 
 
その時に何が?
ホームズ
ワトスン博士

紅茶のカップに手があたって倒れた。

 
 

まったくだらしないな君は。

ホームズ
ワトスン博士

君の手がだよ。

 
 

まったく見苦しいな、自分の失敗を他人に押しつけるなんて。

ホームズ
ワトスン博士
その時紅茶が手紙にかかってしみができた…。
 
 

首相の手紙になんて事するんだワトスン君。

ホームズ
ワトスン博士

それで、急いでふくものを探している時に君がすっ転んでテーブルの上もめちゃくちゃになって

 
 
失敗は恥ではないよ、それを次に生かせないことが恥なのだよワトスン君。
ホームズ
ワトスン博士

そしてそのせいで手紙がどこかに行ってしまったんだ。

 
 
なるほど、だから部屋がこんなにしっちゃかめっちゃかになっているのだな。
ホームズ
ワトスン博士

わかったらさっさと探せ。

 
 

やれやれ、まったく頭脳派の僕がこんな仕事をしなくてはならないとはね…。

ホームズ
ワトスン博士
国家機密なんだからうかつに他人に見つけられるわけにも行かないだろう。  
 

なに、安心したまえ。僕の推理で手紙がどこに行ったかすぐ見つけてみせるよ。

ホームズ
ワトスン博士
この部屋にあることは僕でもわかるが。  
 
君の頭脳ではそんなものだろうがな、僕の頭脳…特に今は飛び抜けてすっきりとした頭脳ならば、いちいち体を動かさなくてもすぐ見つかるというものだよ。
ホームズ
ワトスン博士
いやさっきまでの言動からみてどうかと。!  
  

ふっ、ならば見せてやろう!

ホームズ
ワトスン博士

げっ!

 
 

この灰色の脳細胞を!

ホームズ
ワトスン博士

うわああ後頭部がぱっくりと割れええええ!!

 

 

無事解決!
次回のホームズの活躍があればお楽しみに!

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