}【これまでのあらすじ】
ある寒い日、ホームズは昔の事件を語り出した。
大学時代の同級生レジナルド・マスグレーヴに関する事件だ。
ある日、マスグレーヴはロンドンベイカー街にあるホームズの事務所を訪れた。
地方選出議員も務めるマスグレーヴ家の執事とメイドがいなくなったというのだ。
愛妻ホプキンス警部のお出かけのキスをうけたホームズは、西サセックスのハールストンにあるマスグレーヴ家の屋敷に到着し、マスグレーヴ家に伝わる儀式の謎をあっという間に解き、地下室に入るとそこは古のカレーうどん。そこにはなんとカレーうどんがあったのだが、一週間前のカレーなのだった。カレーを食べて入院したホームズ達は、さる筋からハールストンに「黄色い沼」があるという不思議な情報を手に入れるのだった。

若いホームズ
ワトスン博士

さる筋って新聞の四コマ漫画だろ。

 
 
情報源が何であろうと差別してはいけないさ。たとえそれが公衆便所の落書きであろうとも。
若いホームズ
ワトスン博士

いや差別しろよ。

 
   

情報がなんであれ、自らの確信を補強してくれる物なら大いに信用すべきなのさ。

若いホームズ
ワトスン博士
確信が間違っていたら泥沼にはまるだけだがな。  
   

ともかく結果として、ハールストンに黄色い沼があったことだけは確かだったのだ。

若いホームズ
ワトスン博士 
あ、それは正しかったのか。  
   

結果が正しかったということは、僕の方針が正しかったと言うことに他ならない。

ホームズ
ワトスン博士
こうして間違った方法論は改められることはないわけだな。  
   

というわけで黄色い沼だ。

ホームズ
マスグレーヴ

わーほんとだー黄色いねー。

 
   

すっかり観光スポットとなっているが、昔はどうだったのかね。

ホームズ
マスグレーヴ
昔といってもねえ。あんまり地元の沼に注目したことないなあ。  
   

ええっ!?

ホームズ
マスグレーヴ
な、なんだよう。  
 
そんなバカな!普通、週刊「沼」の地元版を読んでいたらわかりそうなものだろ!?
ホームズ
マスグレーヴ

週刊「沼」?

 
 

ほらあった、週刊「沼」ハールストン版の最新号だ。

ホームズ
マスグレーヴ 

分厚い雑誌だなあ。

 
 
これでこの黄色い沼が前はどんな沼だったか情報がつかめるはずだ。
ホームズ
マスグレーヴ

黄色い沼はめずらしいから、きっと話題になっているはずだよ。

 

…。

ホームズ
マスグレーヴ
どうだい?  
 
だめだ!ほとんどヴィンセント沼の情報だけだ!
ホームズ
マスグレーヴ

ええっ!?黄色い沼より珍しい沼なのかい?

 
 

いや、ごく普通ながら、沼の底からガスが発生している量がやや多いという、玄人好みの沼だからなあ。僕が編集者でもこっちを特集するな。

ホームズ
マスグレーヴ
玄人のセンスは計り知れないねえ。  
 

しかし、マスグレーヴ、この黄色さは何かに似てると思わないか。

ホームズ
マスグレーヴ
そういえば…。  
 

そうだ、ターメリックだ!

ホームズ
マスグレーヴ
ということは、この沼が、カレー化しているのか!  
 

そう、おそらく、今回の事件の真相がこれさ…。

ホームズ
マスグレーヴ
事件の真相…というと、これが執事の失踪と関係しているのかい?  
 

そうだ、君の家の地下のカレーうどん屋を思い出してみるといい。

ホームズ
マスグレーヴ

ええっ、カレーうどんに必要なのは、うどん、スパイス、肉…ネギ…。

 
 
マスグレーヴ、スパイスや小麦粉を作るのに何が必要だと思うかね。
ホームズ
マスグレーヴ
…そうか!石臼だ!

 
 

そう、本格的なカレー屋ではスパイスを粉にする時に石臼を使っている。小麦粉もまたしかりだ。つまり大評判となるカレーうどん屋に必要不可欠な物、それが石臼さ。

ホームズ
マスグレーヴ

確かにあそこには石臼がなかったよ…。

 
 

そう、執事の狙いもそこだったわけさ。奴は、カレーうどん屋の石臼を狙ったのさ。

ホームズ
マスグレーヴ
でも、石臼なんて、僕が毎週購読している週刊「臼」の通信販売でいくらでも買えるのに…。  
 
ただの石臼なら、この週刊「沼」の通信販売でいくらでも買えるさ。でも、君の家にある臼は特別な臼だったんだ。
ホームズ
マスグレーヴ

ええっ?

 
 

考えても見たまえ、まだ大英帝国がインドを征服する前の状態で、カレーうどん屋を開設できるほど潤沢に、しかも安くスパイスを入手できるかね。


ホームズ

マスグレーヴ
そういえば…胡椒一粒は黄金一粒だと聞いたことがあるよ。  
 

東洋の伝説に次のような物がある。臼を右に回すと、大量に物が出てくる石臼の話を。

ホームズ
マスグレーヴ
そういえば…海が塩辛くなったのは、その臼の仕業だって…

 
 
ヨーロッパに猿がほとんどいないのも、かつて蟹と蜂と栗とともに、臼が猿を押しつぶしつくしたからだたと言われている…
ホームズ
マスグレーヴ

そんな…

 
 

君の家の地下に封印されていた物、それが塩がたくさん出る臼と同じような性質を持っていた臼だったのさ。

ホームズ
マスグレーヴ

じゃあ執事はそれを狙って…

 
 
おそらく、それでカレーうどんチェーンの開設を狙っていたんだろう。勤め人にとって、カレーうどん店を始めて独立するというのは夢だからな。
ホームズ
マスグレーヴ
で、執事は今どこに…
 
 

おそらくは…沼の底だな。

ホームズ
マスグレーヴ

沼!?

 
 
この黄色さはターメリック、つまりスパイスだ。執事は誰にも見つからないように、沼へボートをこぎ出し、臼を回してスパイスをだそうとしたんだ。しかし…
ホームズ
マスグレーヴ

しかし?

 
 
彼は出し方は知っていたが、止め方を知らなかった。大量にあふれ出るターメリックのせいで、ボートは沈み、石臼と執事も道連れ、というわけさ…
ホームズ
マスグレーヴ

……。

 
 
カレー…。まさに、黄色い魔物、だな…。
ホームズ
ワトスン博士
で、メイドも行方不明になってたけどそれはどうしたんだ?  
 

メイドはハールストンの駅前で、ビラ配りをしているところを捕まえた。おそらく執事は「メイドカレーうどん屋」を開くつもりだったのだろう。

ホームズ
ワトスン博士
やれやれ、これで話は終わりか。  
 
長い間つきあわせてすまなかったな。
ホームズ
ワトスン博士
ところで、僕に打った身動きがとれなくなる注射はいつ効き目がきれるんだね。  
  
……執事と同じさ…。
ホームズ
ワトスン博士

何が? 

 
 

止め方は知っているが、動かし方は知らない…まさに僕も執事と同じ過ちを繰り返したのさ…。笑ってくれよ、はは、はは、ははは!!

ホームズ
ワトスン博士

笑えるかあっ!!

 

 

ようやく完結!無事解決!
次回のホームズの活躍があればお楽しみに!

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