【これまでのあらすじ】
悪の総帥モリアーティ教授を降霊術で
呼び出そうとしたホームズたちだが、
ボヘミアに行くことにする。
稀代のハガキ職人アイリーン・アドラー嬢の
ボヘミア亡命を阻止するためだ。
パスポートも無事取得してボヘミアの王都
プラハにやってきたのだが、
聖ヴィート教会の地下迷宮でホプキンス警部が
謎の怪人物に誘拐される。
何とか助け出したホプキンス警部を男爵令嬢に仕立て
上げようとする。
その演出のために女性をバイトで雇おうとするが、
なんとその女性がアイリーン・アドラー嬢だったのだ。
アドラー嬢はホームズ達に挑戦的な言葉を吐き、
去っていった。
ホームズ達は亡命事件の謎を解くために
闘志を燃やすのだったが、なんと衆人環視の場で
ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子が失踪してしまったのだ。

 
  

誰だねあの女は。

ほら第一回目の依頼人だよ。

 
 
あんな顔だったか?
まあたしかにまったく印象に残ってないな。  
   

関係ないが
ニッポンのライス煮マシーン
製造メーカー象印というのがあるが
あれは「印象」というのをさかさまに
して、皆様の印象に残らない
ように縁の下の力持ち精神で
行きますよということなのかね?

知らないよそんなこと。

 
   

それにしても平和だね
なべてこの世は事も無しだよ。

いや、だから
ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子が失踪してるんだ。
平和どころじゃないだろう。
 
   
ん?
ああ?
だから、ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子。
 
   

誰だね、それは。

おいっ!
今までの長い長い話を全部台無しに
するなっ!

 
   
あー、あれか。
ボヘミア国の皇太子。
あーねー。
一年近くかかってようやく
事件らしいところにたどり着いたんだから
ちゃんと解決しようとする姿勢を見せろやっ!
 
   

あー、どうせあんな
一般庶民から搾取するだけの
特権階級の王族などは
血にまみれて死ぬるがよいのだっ!

ホームズさんっ!  
 

な、なんだねっ。
ホプキンス君。

なんてことをおっしゃるんですかっ!
ヴィルヘルム殿下…
ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子がどうなってもよいと
おっしゃるんですかっ!

 
 
そ、そそそんなことはまったく
いってないじゃないか…
 
それ以上のことは言ってたじゃ
ないか。
 
 

ま、
ホプキンス君落ち着いて…

こうしている間にも
彼が…あの方がどんな目に
あっているかと思うと… 。
私…私…
 

ほ、ホプキンス君…

涙…。  
 
ホプキンス君…。
ホ、ホームズさん、
あなたは探偵じゃないんですか?
人を救うのが仕事じゃないですか!


 
 

はうっ!

そのあなたが、彼を…
ヴィルヘルム殿下を、
救おうともしないなんて…
そんなあなたは…探偵失格ですっ!
 
 

がーんっ!

そんな、探偵失格のホームズさんなんて、
私、見たくありませんっ!
 
 

がががーん!

まあもとから探偵合格どころか
人間合格も危ういがなあ。
 
 

ううう…
すまなかった、ホプキンス君、
僕は、僕は、僕は…。
間違っていた…
いかなる気に食わない人間でも
救ってやらねばならないのだ…。

では…では、
ヴィルヘルム殿下を、救い出すことに、
協力していただけるんですね。
 
 
もちろんだ…
それが、僕の、探偵としての
責務なのだからっ!
ああ…
ありがとうございますっ、
ホームズさんっ!
 
 

いや、
君に、そこまで言われたら、
僕は…

それじゃ、証人になりうるような方々に
集まっていただいたので、話を聞いてみて
ください。シャーロック・ホームズ先生に
私からお願いしてきていただいたと
言うことは伝えてありますので 。

 
 

そ、そうかい。

このホテルの一室にすでに集まって
いただいてますので、さあ、行きましょう。

 
 

ず、ずいぶん手回しがいいんだね、
ホプキンス君。

完全に手のひらの上で
もてあそばれてるな、ホームズ。

 
 

ああ…。
それがまたなんともいえない
愉悦を僕にあたえて…

やっぱり果てしなく人間失格だな、
君は。
 
 
場面転換です
みなさん、こちらの方が
大英帝国の高名な探偵であらせられる
シャーロック・ホームズさんです。
 
 
いやあどうもどうも
ボヘミアの高貴な方々
私がシャーロック・ホームズです。
大英帝国では王室関係の方の
事件にも関わったことがございまして
げへへへへへ。

あら、そうですの

 
 
おや、どこかで見たことが…

こちらの方はゼークト伯爵夫人ですわ。
一度宮廷内で見られていてもおかしくは
ありませんわ。

 
 

いや、そんなことではなくて
もっと別のところで…

あら、事件のことをお聞きに来られたのでは
なくって?

 
 

あ、まあ…そのような…
では、そのですが…
お茶会を開催されると
言われたのはどなたですかね…。

もちろん、皇太子殿下ですわ。
昨日急に殿下からお召しがあったのですわ。
 
 
昨日急に?
しかし、普段のお茶会というのは
そんなに以前から
予定があるものなのですかね。

もちろんですわ。
お茶会というのは重要な儀礼ですわ。
通常のお茶会でしたら
少なくとも三ヶ月より前に
ご連絡がありますわ。

 
 

ほう…
そういうものですか…
では次のかた

 
まあ、あなたが
あの高名な探偵の
シャーロック・ホームズさん?
 
 

…あの、なんか
また見たことあるような気が…

こちらはガベルスベルガー嬢、
大英帝国の社交界にも出入りなされて
おられますから、どこかでお顔を見られたの
かもしれませんわ。

 
 

いや…そういうことではなくて…

わたくしも大英帝国の
探偵雑誌を取り寄せて
見ておるほどの探偵好きなのですわ!

 
 

…こちらは…

シュテンハイム嬢ですわ。
 
 
はあ…
まったくもって
そのとおりですわ!
 
  

…こちらは…
カイテル子爵夫人ですかね…。

オットマン少尉ですわ。  

 

なんとヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子が!
はたしてヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子失踪の犯人は!?
つづく!前回、前々回と同じ!

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